結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
さっき甘利さんの気持ちを聞いて、あのまま続けていたらきっと上手くいっていたであろうことがわかった。

でも、退会したことは後悔していない。恋人ができる大きなチャンスを自ら捨ててしまったというのに、なぜ心穏やかでいられるんだろう。

目前に迫る、光のお城のようなプラント群を眺めながらぼんやり考える私に、社長の納得したような声が聞こえてくる。


「それで今度は、媚薬入りチョコレートを研究し始めたと」

「そうなんです。こうなったら相手をその気にさせるものを自分で…………へっ!?」


思いっきり認めた直後、とんでもないことに気づいてギョッとした。

しゃ、社長、どうして媚薬チョコのことを知ってるのっ!?

目と口をぱかっと開いて慌てふためきつつ、平然としている彼になんとか確認を試みる。


「な、な、なんで知って……!」

「この前、定食屋で話してただろ。研究課のメンバーで」

「いたんですか!? 社長があの庶民派な定食屋に!?」

「いちゃ悪いか」


目を据わらせてつっこんだ社長は、驚きと動揺を隠せない挙動不審な私に淡々と説明する。

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