結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「たまたま入ったらお前たちがいたから声かけようとしたんだが、異様なほど熱中してたから遠慮しておいた。すぐ近くの席に座ったのに、全然気づいてなかっただろ」

「気づかなかったです……」


まさかあの場に社長が来るだなんて思わないもの! 一体どこから聞かれていたんだろう。

いや、もう聞かれてしまったことは仕方ない。どうしよう、今度こそ絶対引かれてるよ。

この横浜港に深く沈んでしまい気分でうなだれていると、意外な言葉が耳に届く。


「面白いこと考えるよな。発想はすごいよ」


特に呆れているでもなく、むしろ感心しているらしき声に、私は暗い海の中から引き揚げられたようにぱっと顔を上げる。


「……引かないんですか?」

「成功するかは別として、斬新なアイデアを出すのはいいことだ。これからもどんどん新しい切り口を見つけたらいい」


思いもよらない肯定的なアドバイスをもらえて、ほっと胸を撫で下ろした。

あぁ、ありがとうございます社長。これで心置きなく開発研究を進められます!

希望の光を見つけた気持ちで、心の広い彼に感謝していると、「でも」という若干不安な接続詞が聞こえてくる。


「それはビジネス上での話だ。恋愛としては、くだらない」

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