結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
私の顎に手を添える彼は男性のくせに艶めかしく、けれど獣のような獰猛さも感じ、心臓がバクバクと脈打つ。

危機を感じて逃げたくなるけれど、今の私に可能なのはシートに背中を押しつけることだけ。


「い、意味がわかりませ……」

「綺代」


甘い響きを奏でる声で名前を呼ばれ、胸がきゅっと締めつけられた。

俯き気味になっていた顔をくいっと上げられ、困ったように眉を下げている自分が彼の瞳に映る。


「お前は理性で頭を固めすぎてるから恋に落ちにくいんだよ。もっと本能に正直になれ」


そのアドバイスを、乱れた頭の中でなんとか理解しようとしたのもつかの間、再び唇が重ねられて思考は遮断されてしまった。

触れるだけのさっきのキスとは違い、口を開けて食べてしまうかのようについばんでくる。

弱い力で彼の胸を押し、「んー!」と喉から声を出して抵抗を試みるものの、キスは深くなっていく一方だ。

苦しくなり、酸素を求めて私がわずかに唇を開けた瞬間を、獣と化した彼は逃さない。

隙間から入り込む舌は、生き物のように歯列をなぞり、私の舌を絡め取って味わい尽くす。ついでに、私の理性までも飲み込んでしまうかのように。

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