結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
思考が妖しくなっている頭を抱えて悶えつつも、深く息を吐き出してなんとか心を落ち着かせた。

あぁ……紫乃お姉様の言った通りだ。男と女って、本当になにがあるかわからない。

姉の言葉をしみじみと思い返していると、運転する社長がふいに道を確認する。


「ここを右?」

「あっ、はい、そうです」


車はわが家のすぐそばまで迫っていて、住宅地の狭い道をゆっくり走っていく。

街灯があまりない、閑静なその道を通りながら、社長が心配そうに言う。


「毎日こんな暗いところ通ってるのか。ちゃんと防犯ブザーとか持っとけよ」


眉をひそめる彼を見て、思わず吹き出してしまった。だって、なんか保護者みたいで。


「大丈夫ですよ。子供の頃から通ってるんですから」

「それは関係ない。いつどこで変なやつが出てくるかわからないだろ」

「まぁそうですけど……社長って案外心配性ですね」


私が転んだとき、目が覚めるまでそばについていてくれたし、さっきも甘利さんから守ろうとしてくれたし。

そのたびに、私は自分が子供になったみたいな気分になるから、ちょっとくすぐったい。

< 133 / 276 >

この作品をシェア

pagetop