結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
クスクス笑う私に、至極真面目な社長は独り言のように言う。


「誰にでもそうなるわけじゃない。お前は特別」


穏やかな声でこぼされたそのひとことに、胸がキュンと小さく鳴いた。

“特別”という言葉は、こんなに嬉しいものだったっけ。

自然に緩んでしまう唇を結んでいると、クリーム色の外壁が少しくすんだ、こぢんまりとした一軒家の前に到着した。

見慣れた自宅の景色を目にして、今日の終わりが来たことを実感する。いろいろあって心の中は散らかったままだけれど、楽しかったことに違いはない。

私は社長に身体を向け、しっかりと頭を下げる。


「今日は本当にありがとうございました。楽しかったし、美味しかったです。ごちそう様でした」

「俺も楽しかったよ。ありがとう」


優しい笑みを向けられて、なんとも言えない気持ちになる。充足感と切なさが入り混じったような、後ろ髪を引かれるような……。

そう、離れがたいんだ。まだ帰りたくない。今日が終わってしまうのが寂しい。

心に耳を傾けると、そんな声が聞こえてくるようでドキリとした。きっとこれが、本能。

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