結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
交際志願からプロポーズまでの速度
月曜の朝は、多くの人が会社へ向かう足取りが少し重くなるかもしれないけれど、私は特別感じたことはない。
しかし、今日は違う。社長に顔を合わせると思うと、いつの間にか歩調は遅くなっていた。
それは彼のことが嫌なわけではなくて、会ったら絶対にあの夜のキスを思い出してしまうし、そうしたら挙動不審になることがわかりきっているからだ。
ひとまず、研究課まで会うことなく来ることができてホッとしたのもつかの間、他にも懸念するべきことがあったと気づく。
「きーよーさん! 金曜日、どうでしたか!?」
白衣に着替えてデスクに座ると、きらきらと目を輝かせる咲子ちゃんがくっついてきてギクリとした。
さらに、氷室くんのスクエアフレームの眼鏡も、反対側の視界に入り込んでくる。
「肌の調子も良さそうですし、頬がわずかに紅潮しています。いい時間を過ごせたみたいですね」
いつかと同じように観察されていたたまれないけれど、両側から覗かれているため顔を背けることができない。
そうだった、氷室くんはともかく、咲子ちゃんにはかなり協力してもらったんだから、話さないわけにいかないよね。
でも、さすがに今は無理だ。