結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
唇の距離をゼロにする自然現象
氷室くんと別れたあと、ロビーからミーティングルームに向かう間は何事もなく、葛城さんを部屋に通してすぐに社長も戻ってきてくれた。
専務や生産課長も交えて行った、チョコレートの試食会。葛城さんはここでも率直に感想を述べ、ためになるアドバイスもくれて、私はそのすべてを逃さないようメモしていた。
真剣に話す彼からは、スイーツに対しての情熱が窺え、その姿はとてもカッコいいなと素直に感じる。
時々目が合うと、密かに甘い笑みを向けられ、そのたびに私は内心どぎまぎしてしまったけれど。
こうして会は無事に終わり、葛城さんとサンセリールとの繋がりはまたひとつ濃くなったような気がした。……ついでに、私との関係も。
この日、帰宅した私は、定休日で家にいた母にケイコクでの葛城さんとの一部始終を聞き出していた。
ダイニングテーブルの向かい側に座るお母さんは、かなりの上機嫌で夕飯のから揚げをお皿に取り分けている。
「丈くん、とっても可愛くて素敵な子じゃない! チョコレートも作ってるパティシエさんなら綺代とも話が合うと思って、めちゃくちゃアピールしちゃった」
「えぇー……“丈くん”って」