結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
今日は、秋限定で売り出すマロンクリーム入りのチョコレートの試作を、私と咲子ちゃんを含めたチームで行う。

これは新商品ではないけれど、前年よりも良い商品に改良して消費者へと届けなければならない。

私たち以外にも、氷室くんたちのチームが別件で各々作業をしている中、壁際にある小型のコンチェという円筒の機械でチョコレートを練り上げていると、上司である課長がこちらにやってくる。

今年五十歳になる、丸いお顔に眼鏡をかけた小柄な彼は、可愛いタヌキみたいな風貌で、甘利さん以上にゆるキャラ感満載だ。


「倉橋さん、来月の新商品の開発会議なんだけど、僕の代わりに出てもらってもいいかな? 法事と重なっちゃってね」


困り顔の彼に言われ、私は一瞬思考を巡らせる。

新商品の開発を始めるときは、各課内で数人抜擢してチームを組み、そのリーダーと課長とで会議に参加することになっている。

私も何度かチームリーダーを任されたことがあるから会議にも慣れているし、課長が不在でもおそらく問題はないだろう。


「えぇ、大丈夫ですよ。わかりました」

「悪いねぇ」


快く返事をする私に、課長は申し訳なさそうに微笑んだ。そして、私の肩をぽんぽんと軽く叩きながら、こんなことを言う。

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