結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「倉橋さんにもかなーり期待してるから。今度の新作は国際コンクールで受賞を目指すつもりで頑張ろう」


国際コンクールというのは、世界中のチョコレートに関わるあらゆるステージにおいて、最も優れた高品質なチョコレートを認定するコンクールのこと。

わが社も過去に受賞したことがあるけれど、そのときのチョコレート作りに、私はまだ本格的に関わってはいなかった。

昨年は大手菓子メーカーのチョコレートが受賞したというし、私もぜひチャレンジしてみたい。

課長は皆に愛される穏やかな性格で人望も厚く、仕事もそつなくこなす有能な人。そんな課長に期待されるというのは、素直に嬉しいしやる気も出る。

私は口元を緩ませ、大口を叩いてみる。


「もし受賞したら、授賞式私も連れてってくださいね」

「もちろんだよ。ベルギーでビール飲みながらムール貝でも食べよう」


わははっと笑って離れていく課長を見送ると、今度は咲子ちゃんが隣にやってきて感心するように言う。


「さすが綺代さん、期待されてるなぁ。コンクールで受賞、してみたいですよね」

「うん。私たちだけの力じゃどうにもならないけど、戦力にはなりたいね」

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