結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
『どうして?』

「……好きな人がいるので」


正直に答えると、電話の向こうでため息が吐き出される。


『そっか……やっぱりね。たぶんダメだろうなとは思ってた』


苦笑交じりの、思ったよりさっぱりとした声が返ってきた。葛城さん自身も、電撃的な告白だったし断られる確率が高いと踏んでいたのかもしれない。

そんなふうに推測して少しほっとした次の瞬間、彼の口調も、雰囲気も変わる。


『でも、僕はここで引き下がるほど往生際が良くないんだ。ついでに性格も良くない』

「え?」


さっきまでの柔らかさは消え、初めて会ったときのような刺々しさが滲み出ている。

そして、無表情で気だるげに頭を掻く姿が思い浮かぶアンニュイな調子で、予想もしなかった発言を投下する。


『倉橋さんが僕を選んでくれないなら、サンセリールとの取引は白紙にさせてもらおうかな』


頭の奥で、重い鐘が打ち鳴らされたような感覚がした。

私が葛城さんと付き合わなければ、サンセリールは大きなビジネスチャンスを逃すことに……? そんな交換条件、あんまりじゃありませんか!?

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