結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
顔が熱くなり、口をパクパクさせてあからさまに動揺する私を見れば、答えは一目瞭然だろう。綾瀬さんはクスッと嘲るような笑みを浮かべる。


「やっぱりそうなのね。可哀相に」


“可哀相”という言葉が冷たく響き、私はカチッと固まった。

あぁこれは、ブラック綾瀬様、降臨の兆しが……。でも、なんで可哀相なの?

私の単純な疑問を読み取ったらしい彼女は、冷笑を湛えてこう補足した。


「社長は、あなたを通して別の人を見ているみたいだから」


嫌な予感に、ドクンと胸が波打つ。

心当たりがあるし、あまり聞きたくはないのに、相反して詳しく知りたがる気持ちもあり、口が勝手に動いてしまう。


「……どういうことですか?」

「彼の心には、特別な人がずっと棲みついている。倉橋さんはその人に似ていると聞いたわ。つまり、あなたは代わりでしかないのよ」


抑揚なく諭すような彼女の声が、身体を濡らした雨と一緒に染み込んで、心まで冷やしていくようだった。

推測した通り、社長にはずっと大切な人がいて、私自身に好意を抱いてくれているわけではないんだ。

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