結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
でも、彼にとって私は子供みたいなもので、かつ元カノさんの代わりなのだ。この恋人ごっこも、擬似体験として割り切って楽しまなければ。

ぐらつく心に必死に言い聞かせ、それからもいろいろなアトラクションやゲームを楽しんだ。

お化け屋敷では、作り物だとわかっているせいであまり怖がらず、むしろ装飾を観察してしまう私に、達樹さんは「男泣かせだな」と脱力していた。

そんな彼も基本ポーカーフェイスで、だからこそたまに見せる無邪気な笑顔はたまらない。

ちょっぴり驚いたり、ゲームでムキになったり、普段見ることができない表情をたっぷりお目にかかれてものすごく贅沢だ。

人がいない遊園地は少し寂しいかも、と最初は思っていたけれど、遊んでいるうちにだんだん気にならなくなっていた。

夜ということもあって、ライトアップされたロマンチックな雰囲気の園内にふたりきりでいると、本当に夢のようで現実味を感じない。

しかし、時間は確実に過ぎていく。だいたいの乗り物を制覇した頃、達樹さんが腕時計に目を落として言う。


「そろそろ飯を食いに行かないとな」

「じゃあ、やっぱり最後はアレですね」


最後に乗るものだと、なぜか私の頭にインプットされている大きな観覧車を指差すと、彼も了解してそちらを目指した。

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