結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
そうよね、もう引き延ばせないよね……。彼のためにも、会社のためにも、いい加減私は葛城さんのもとへ行かないと。

理性で気持ちを落ち着かせ、私から話を続行させる。


「達樹さんが話したいこと、なんとなくわかってます。まず、ずっと前から私のことも知っていた、ってことですよね」


元カノさんの話をするのはやっぱり辛いため、この話題から振ると、達樹さんは小さく頷いた。


「お母さんから聞いたか」

「はい。でも実は、私も社長の名前は覚えてました」


意外そうな顔をする彼に、私は微笑んで続ける。


「今日も、私のお父さんの代わりにここへ連れてきてくれたんでしょう」


確認すると、彼はふっと表情を緩め、「あぁ」と再び頷いた。そして、いつの間にか頂上を過ぎていた景色に目をやりながら、懐かしむように話してくれる。


「親父から、倉橋さんが『誕生日に娘と行く約束をした、って嬉しそうに話してた』って聞いてたんだ。
それはもうだいぶ昔のことだが、お前とよく接するようになってからそのことを思い出して、叶えてやりたいなと思った。俺が代わりじゃ満足しないかもしれないが」

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