結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「そんなことありません! すごく嬉しいです。ありがとうございます」


嘲笑を漏らす達樹さんに、私はぶんぶんと首を横に振り、心からお礼を言った。

子供の頃にお父さんと来ていたら、全然違う楽しさを経験できていたのだろうけど、今日だって間違いなく幸せを味わえたから。

今日だけじゃない。どんな理由であれ、彼が私にしてくれたことは全部嬉しかった。


「これまでも、私のことを気にかけてくれていたのは、お父さんのことがあったからだったんですね。達樹さんのその心遣いには本当に感謝してます。私も、正直もっとお父さんに甘えたかったなって、ずっと思ってたから」


こんなことを打ち明けるのは気恥ずかしい。いい歳をして、お父さんに甘えたかった、だなんて。

でも達樹さんのおかげで、そういう心許なさや寂しさを消してもらえた気がしている。

父親じゃなくても、包容力のある男性に守られるという擬似体験は、私にとってとても有益なものだった。

それが、恋人として与えられるものなら、最高に幸せだったのだけれど。


「もう十分です。お父さんの代わりも……元カノさんの代わりも」

< 213 / 276 >

この作品をシェア

pagetop