結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
■結論■
不可解な彼女の真意を究明せよ
梅雨も明け、夏本番らしい入道雲が浮かぶ真っ青な空とは正反対に、俺の心はどんよりとした分厚い灰色の雲に覆われていた。
綺代の誕生日、俺は彼女への想いをすべてさらけ出すつもりでいたのに、なぜか逃げ出されてしまったからだ。
しかも、観覧車の中にひとり置き去りにされるという始末。あのあと、俺がどれだけ係員に憐みの目を向けられたと思ってるんだ……。屈辱すぎる。
すぐに追いかけたが見つけられず、月曜の今日まで、電話をしてもメッセージを送っても華麗にスルーされている。
家まで押しかけようかとも思ったが、ここまで拒否するということは本当に嫌われたか、なにか理由があるに違いないのだから、ひとまず控えておくことにした。
しかし、やはりもう一度話をしたいという思いは変わらない。会社では逃げられないだろうと踏み、皆が出勤してくる今、いつかと同じように研究課の前で彼女を待ち伏せしている。
今日行う会議の資料に目を通しつつ、社員に挨拶を返していると、しばらくして綺代がひとりで現れた。俯きがちなその姿は、元気がなさそうに見える。
「倉橋さん」
不機嫌さを押し殺し、ビジネスモードの笑みを貼りつけて声をかけた。目線を上げた彼女は、眼鏡の奥の目を見開いてギョッとする。