結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「クソっ……」
またしても捕獲失敗した金曜の昼、思わず舌打ちと悪態をついて社長室に入った直後、ギョッとしている秘書の綾瀬と目が合った。
あぁそういえば、彼女も物腰柔らかな俺しか知らないんだった。
どうしても素を隠していたいわけではないし、バレても別に問題はないが、とりあえずふわりと微笑む。「すみません、なんでもありません」と穏やかにごまかし、デスクに腰を下ろした。
それでも、普段から俺をよく見ている彼女は様子がおかしいことに気づいているらしく、コーヒーをデスクに置きながらこんなことを言う。
「最近、イライラしていらっしゃるようですね。……倉橋さんと、なにかありましたか?」
はっきりと名前を出され、ノートパソコンを操作し始めた手が止まってしまった。
そんな俺を見て確信したらしい綾瀬は、俺のそばに立ったまま続ける。
「どうして、そこまで彼女を気にかけるんです?」
落ち着いた声で問いかけられ、考えを巡らす。その答えはすぐに見つかり、背もたれに背中を預け、ゆったりとした口調でこう返した。
「理由はたくさんありますが、ひとことで言えば……好きだから、でしょうね」
またしても捕獲失敗した金曜の昼、思わず舌打ちと悪態をついて社長室に入った直後、ギョッとしている秘書の綾瀬と目が合った。
あぁそういえば、彼女も物腰柔らかな俺しか知らないんだった。
どうしても素を隠していたいわけではないし、バレても別に問題はないが、とりあえずふわりと微笑む。「すみません、なんでもありません」と穏やかにごまかし、デスクに腰を下ろした。
それでも、普段から俺をよく見ている彼女は様子がおかしいことに気づいているらしく、コーヒーをデスクに置きながらこんなことを言う。
「最近、イライラしていらっしゃるようですね。……倉橋さんと、なにかありましたか?」
はっきりと名前を出され、ノートパソコンを操作し始めた手が止まってしまった。
そんな俺を見て確信したらしい綾瀬は、俺のそばに立ったまま続ける。
「どうして、そこまで彼女を気にかけるんです?」
落ち着いた声で問いかけられ、考えを巡らす。その答えはすぐに見つかり、背もたれに背中を預け、ゆったりとした口調でこう返した。
「理由はたくさんありますが、ひとことで言えば……好きだから、でしょうね」