結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
咲子ちゃんにコンチェを回す時間とチョコレートの風味を記録しておくよう頼み、社長のもとへ向かう。

戸口に寄りかかり、腕組みをして待っている彼は、相変わらず穏やかな表情だけれど、その笑みも恐ろしく感じてしまう。

身長百六十センチの私も見上げるくらいの高身長。前髪はすっきりと額を出したスタイルにセットされていて、きりりとした眉も綺麗な二重の瞳もよく見える。

神々しすぎて、私なんて粉砕されてしまいそうだわ……なんて思いながら、床を拭く後輩の横に立ち、肩をすくめてぺこりと頭を下げた。


「お疲れ様です」

「お疲れ様。君にこれを届けに来ました」

「え……あっ!」


社長に差し出されたものを見下ろし、目と口をぱかっと開いた。

それは、さっきないことに気づいたメモ帳。どうして社長がこれを持っているの!?

瞬時に記憶を遡らせると、昨日のお見合いの時間や場所をメモしてあったため、ハンドバッグに入れたことを思い出した。

私はアナログな人間で、予定だけでなく、忘れたくないことはなんでもメモに残しておくタイプなのだ。

……けれど、そんなことはどうでもいい。今重要なのは、社長がこれを届けに来てくれたということ。

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