結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
それから、半強制的に接待に連れていこうとしたときのこと。

少なからず嫌がられるだろうと想定していたのだが、そんな気配も、臆すこともなく、むしろ『期待に応えたい』と言って意欲的に協力してくれた。

その潔さは感心するほど。いろいろな人間を見てきたが、こいつは普通の女とは少し違うな、とそのときからなんとなく感じていた。

その上、あの難攻不落で有名な葛城丈を前向きにさせたのだから、尊敬すらしてしまう。


綺代のことをだんだん特別視するようになり、礼をするためにふたりで食事をしに行ったときは、久々に心が満たされる時間を過ごせた。

マニアックな話を熱心に語る姿はおかしく、照れたように自分のことを話す姿は可愛らしくて。

仕事中のきびきびしたイメージとはまた違ったいくつもの面を、もっと見たいと思うくらい惹かれていた。

父親のことを打ち明けたときの表情は、放っておけないような儚さがあり、俺がなんとかしてやりたいとも思った。俺の過保護は、どうやらその辺りから始まっていたらしい。

少しからかっただけであたふたしたり、顔を真っ赤に染めたりと、男慣れしていない感じもまたたまらない。

……初めてだった。こんなに魅力を持っているくせに、恋愛には不器用で、その心に踏み込みたくなるような子は。

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