結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
そしてその日の夜、あまりにも頭の固い彼女に痺れを切らしてキスをしたとき、はっきりと自覚したのだ。

俺はもう、完全にこいつに落ちている、と。

考えすぎて恋愛ができなくなっている彼女に、恋を教えてやりたい。

頭ではなく心で、どうにも俺を求めてしまうくらい、夢中にさせてやりたい。そんな野心が生まれていた。


しかし、俺はあえて気持ちを伝えないようにしていた。彼女が自分から恋心に気づかなければ意味がないから。

俺が告白するのは簡単だが、それに流されるようなことにはなってほしくはなかった。

……とは言え、つい愛しさが膨れ上がって本能の赴くままに接してきたのだが。

亡くなった倉橋さんの代わりに守ってやったり、甘やかしたりしているうちに、彼女を手に入れたい欲求を、案の定抑えられなくなっていた。

綺代に好意を持っているであろう葛城と必要以上に関わらせないようにしたのも、泣いている顔にキスをしたのも、すべて彼女が好きだからだ。

社長の皮を剥いだ俺が、幸せにしたい、笑顔にしたいと思うのはあいつしかいない。

結局、彼女が恋心を自覚してくれるのを待ち切れず、誕生日にその想いを伝えてしまおうとしたというのに──。


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