結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「なぜそんなことを……」

「社長ならおわかりでしょう、私の気持ちを」


眉を下げて悲しげに微笑む彼女を見て、わずかに胸が痛む。

……綾瀬の気持ち。彼女の言う通り、それにはなんとなく感づいていた。仕事でのパートナー以上に、俺を慕ってくれていることには。

だが、綾瀬には綺代に対するような愛しさが湧くことはなかった。だから、気づいていないフリをしていたのだ。

彼女は肩の力を抜くように息を吐き、正直な思いを飾らない言葉にして話し出す。


「嫉妬したんですよ。私がずっと社長を支えてきたのに、どうしてあの子が贔屓されるのって。だから彼女を困らせてやりたくて、意地悪なことを言いました。それでスッキリするはずだったのに……自分が嫌になっただけでした」


嘲笑する彼女から語られたことは、普段の完璧な秘書からは想像もつかないような裏の行い。

もちろん驚いたが、そんなことをするくらい綾瀬は切羽詰まっていたのかと思うと、責める気にはならない。ゆっくり頷きながら、「そうだったんですね」と呟いた。

これでようやく綺代が俺を拒否する理由がわかった。俺には別に好きな人がいると勘違いしているのだろう。

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