結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
だったらその誤解を解くまでだが、どうやって話し合いに持ち込むかが問題だ。
腕を組んで考え込んでいると、背筋を伸ばしていつもの凛とした姿に戻った綾瀬が、業務内容を報告するような調子で言う。
「倉橋さんは、研究課の氷室さんという方と親密にしているようです。本人がダメなら、彼をあたってみてはいかがですか?」
「氷室……」
研究課のホープである彼のことは知っている。だが、彼の名が出てくるのは少々意外だ。
確かに、綺代ともうひとりの女性社員と、よく三人でいるところは見かけるが、そこまで仲が良いとは思っていなかったから。
「親密とは、どの程度?」
若干強張った声で問いかければ、綾瀬は「相合い傘をして、頬に手をあてるくらいの仲です」と、淡々と答えた。
それを聞いて、綺代に傘を渡してやってほしいと綾瀬に頼んだときのことがふと思い当たる。
俺が偶然窓から見たのは、雨が降り出しているのに傘も差さずに電話をしているらしき綺代の姿だったのだが、まさかあのあとに?
傘に入れてやるだけならまだしも、頬に手をあてるなんてことは、ただの同僚ならしないよな……。あの無神経パティシエに気を取られていて迂闊だった。
腕を組んで考え込んでいると、背筋を伸ばしていつもの凛とした姿に戻った綾瀬が、業務内容を報告するような調子で言う。
「倉橋さんは、研究課の氷室さんという方と親密にしているようです。本人がダメなら、彼をあたってみてはいかがですか?」
「氷室……」
研究課のホープである彼のことは知っている。だが、彼の名が出てくるのは少々意外だ。
確かに、綺代ともうひとりの女性社員と、よく三人でいるところは見かけるが、そこまで仲が良いとは思っていなかったから。
「親密とは、どの程度?」
若干強張った声で問いかければ、綾瀬は「相合い傘をして、頬に手をあてるくらいの仲です」と、淡々と答えた。
それを聞いて、綺代に傘を渡してやってほしいと綾瀬に頼んだときのことがふと思い当たる。
俺が偶然窓から見たのは、雨が降り出しているのに傘も差さずに電話をしているらしき綺代の姿だったのだが、まさかあのあとに?
傘に入れてやるだけならまだしも、頬に手をあてるなんてことは、ただの同僚ならしないよな……。あの無神経パティシエに気を取られていて迂闊だった。