結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
だから心が動かされないのだ。そしてきっと、本当に好きではないから、彼は自分に都合のいい条件を貫き通すことができる。

葛城さんは、図星を指されたというより、今初めて気づかされたというように目を丸くして押し黙った。

視線を泳がせ、強張った笑みを作る彼からは、明らかに動揺していることが見て取れる。


「恋愛って、そういうものじゃない? なにもメリットがない人を好きになるかな」


小首をかしげて考えている彼からは嫌味などは感じず、その様子を見て私は冷静に分析していた。

この人は、いまだに知らないのかもしれない。誰かを本気で愛するということを。

なんだか、社長を好きになる前の自分を見ているようだ。この数か月で学んだ大切なことを、彼にも教えてあげたい。


「……以前は、私も自分にどれだけのメリットがあるかを考えて、付き合う相手を見極めようとしていました。でも、本気で人を好きになるってそういうことじゃないんだって、今回初めて気づいたんです」


落ち着いて話す私の頭の中には、社長の麗しい姿がまざまざと浮かぶ。彼を想うだけで、自然と笑みがこぼれる。


「相手が笑ってくれたり、喜んでくれたりするだけで、胸がときめいて、こっちまで幸せになる。なにかをしてもらったら、その何倍もお返しをしたくなる。無条件でそう感じられることが、愛なんじゃないでしょうか」

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