結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
ちゃんとした言葉も発せず、目と口を開けたまま固まる私の向かい側では、葛城さんが同じようにぽかんとしている。


「どうしてあなたが……」

「葛城さんが、彼女に不当な要求をしていたという情報を手に入れましたので」


社長は静かに戸を閉めてそう言った。どうやら私たちの詳しい事情を知っているらしい。

驚きっぱなしの私に、彼はわずかに微笑み、「君を捕まえられないので、氷室くんからすべて聞きました」と教えてくれた。

確かに、氷室くんたちには今日ここに来ることも話したけれど、まさか社長が全部聞き出してきたとは……。

彼の表情は穏やかだけれど力強くもあり、なんとかしてくれそうな頼もしさを感じる。頼りなかった心が震えて、なぜだか泣きそうになった。

そんな私から葛城さんへと視線を移した社長は、立ったまま冷静に事実を確認する。


「倉橋さんがあなたと交際しなければ、わが社との契約を白紙にするとおっしゃったそうですね」


声色は普段通りでも先鋭な眼差しを向ける彼に、すでに落ち着きを取り戻している葛城さんは、素直に「えぇ」と認める。


「僕の知恵や技術を与えることになるんですよ? それ相応の報酬はいただかないと」

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