結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
最後のひとことは、子供のように口を尖らせてぶっきらぼうに言った。負けず嫌いなところが彼らしい。

しかし、すぐに憂いを帯びた表情に変わり、目を伏せる。


「僕は本当に、軽い気持ちで君を欲しがったわけじゃない。だけど、大事なことが足りなかったんだって気づかされたよ」


どうやら、葛城さんも身をもって知ったみたいだ。恋愛のなんたるかを。

彼の雰囲気が柔らかくなったように感じて、ほっと胸を撫で下ろす。すると彼は姿勢を正し、今度はまっすぐ社長に目を向ける。


「卑怯者の負け犬だと認識されたままは嫌なので、仕事で名誉挽回させてもらいますね。泉堂社長」


挑戦的ではあるものの、真摯な色も含んだ眼差しで言う彼。

もしかして、これからもサンセリールとの事業を続けてくれるの?

予想外の前向きな発言で、自然と表情が明るくなる。一瞬キョトンとした社長も、すぐに嫌味のない笑みを浮かべる。


「大いに期待しております」


社長は丁寧に言い、照れ隠しのようにぷいっとそっぽを向く葛城さんに、今一度頭を下げた。


< 237 / 276 >

この作品をシェア

pagetop