結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「はぁっ……し、死にます……!」


胸にしがみついて、肩で息をする私は、涙目で達樹さんを見上げてキョトンとした。

絶対笑われるだろうと思ったのに、彼は意外にもあまり余裕がなさそうな顔をしている。


「今すぐお前を食いたいのを我慢してるんだ、これくらい許せ」


欲求を堪えた様子でぶっきらぼうに言われたそのひとことに、胸がキュンと鳴いた。

……あぁ、獲物にされて喜ぶなんて、私はどれだけ彼の虜になっているのだろうか。求められることが、なにより嬉しい。

達樹さんは安堵のため息を吐きながら、私をしっかりと抱きすくめる。


「よかった、あいつのものにならなくて……。でもお前、ただ言いなりになってるだけじゃなかったな」


安心する腕の中で、先ほど葛城さんに物申していたことを思い返し、私はいたずらっぽく小さく笑う。


「この固い頭を使って、悪あがきしてみようと思ったんです。私、そんなにしおらしくないので」

「それに関しては感心するが、会社の……俺のために黙って去ろうとするとか、カッコつけるなよ。笑えないだろうが」


おどけてみせたものの、達樹さんはとても真剣に、心配を露わにしてそう言った。

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