結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
確かに、あのタイミングで社長が来てくれなかったら、もっと厄介なことになっていたに違いない。

「ごめんなさい」と素直に謝ると、少し身体を離され、情熱を湛えた双眼に視線を奪われる。


「でもそんな綺代が、やっぱりたまらなく好きだ」


……初めて、面と向かって好きだと言われた。

その幸せの威力たるや、言葉では表せない。身体も心も震えて、瞳が潤んで、喜びや感動が溢れる。


「……私も、大好きです」


少しの勇気を出して、気持ちを声に乗せれば、目の前の愛しい顔が嬉しそうにほころんだ。

理性的なお話はあとにしよう。今はただ、この笑顔とぬくもりを独り占めしていたい。

どちらからともなく、再び鼻先を近づける。私たちはしばらく夕闇に紛れて抱き合い、唇の熱を分け合った。



街灯や高いビルの明かりが綺麗に輝き始めたみなとみらいの街を、達樹さんが車を停めている駐車場に向かってゆっくりと歩く。

想いが通じ合い、ずっと繋いでいる手から幸せが伝わってくるものの、いろいろと大事なことを思い返すと気まずい。まずは遊園地での件を謝らなければ。

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