結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
無意識に口を両手で覆い、呆然とダイヤを見つめる私に、達樹さんは「本当は誕生日に渡すつもりだった」と明かした。

そして、いたずらっぽく微笑んでみせる。


「逃げられなくて残念だったな。俺に守られるために生まれてきたんだと思え」


強気で大袈裟な言葉だけれど、たまらなく嬉しい。感激でまた涙が込み上げ、呆気なく溢れた。

でも、いまだに信じられない。これが現実だと信じるなんて無理だ。達樹さんと両想いだとわかっただけで幸せなのに、さらにこんなに素敵なサプライズを用意してくれていたなんて。

恋愛経験もなく、地味でお堅い研究員の私が、ドラマのヒロインみたいな扱いを受けていいのだろうか。

受け取った薔薇の花とダイヤが納まる箱を持つ手に、ぽたりと涙が落ちた。


「わ、たし……頭固いし、色気もないし、つまらない女ですよ……?」


自信のない呟きをこぼすと、達樹さんはこちらに手を伸ばして眼鏡を取り、指で涙を拭いながら言う。


「そんなお前が誰より魅力的だと思う俺は、よっぽどつまらない男か」


ドキリとするとともにはっとさせられ、私は慌てて首を横に振った。

< 246 / 276 >

この作品をシェア

pagetop