結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
いまだに媚薬チョコ研究をしていたと知られてしまったことも恥ずかしいし、呆れられているに違いない。

やってしまった、と頭を垂れる私に、余裕の声が投げかけられる。


「自分で食べてみてどうだ?」


そう問われ、ひとりで味見したときとはまったく違う感覚になっていることに、はたと気づいた。

それと同時に、達樹さんが『媚薬なんて必要ない』と論じる理由もわかった気がする。


「……ドキドキしてます、尋常じゃなく。でも、これはチョコのせいじゃなくて……たぶん、達樹さんがそばにいるからだと思います」


顔も身体も熱くて、奥のほうが疼くようなこの感覚は、おそらく媚薬の効果と似ているだろう。

でも、それはチョコレートのおかげではないと、なぜだかはっきりわかる。

この人を好きだという自分の気持ちが、本能が、身体を高ぶらせているのだと。

高揚感で瞳を潤ませる私の考察を聞き、達樹さんは満足げな表情を浮かべた。


「ようやくわかったか。好意を持ってる相手の存在自体が媚薬になるんだよ。その人の声とか、視線とか、触れる体温が」


甘い声を紡ぎ、産毛を撫でるように私の頬を滑らせた彼の手は、そのまま髪をそっと掻き上げる。

愛おしそうに触れてくれるその手つきにもドキドキしつつ、高揚しているのは私だけではないか確認しておきたい。

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