結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
私がメモ帳に書き留めておくくらい彼の理念を気に入っていたのは、なんとなく自分の体験とリンクしているように感じていたからだった。

それが本当に私がきっかけだったとは、予想もしなかった。

熱いものが込み上げる胸に無意識に手を当てていると、達樹さんがほんの一瞬こちらに視線を向ける。

目が合ったような気がしてはっとした次の瞬間、彼は“内緒ですよ”とでも言うように、立てた人差し指を口元に近づけ、含みのある笑みを浮かべる。


「ここだけの話、その女の子が、私の最愛の人です」


あられもない爆弾発言で、会場の皆がざわつき、女性社員は控えめに黄色い声を上げた。私はもう、真っ赤になって俯くしかない。

達樹さん……いくら皆が奇跡的に私たちの交際に気づいていないからって、大胆すぎ! 影響力ありまくりの社長様なんだから、熱愛宣言のスクープはすぐ広まっちゃうのに!

とは言え、皆の前で宣言してくれたことを嬉しく思う自分もいて、私は内心胸をときめかせて悶えていた。


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