結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
入社式の一日が終わり、私は達樹さんの車に揺られて、とある場所に向かっている。その車内で話すのは、もちろん今日のこと。
私も初対面のときのことを覚えていて、それがきっかけでサンセリールに入ったと明かすと、彼もとても驚いていた。
「本当にびっくりしましたよ……。まさか達樹さんも覚えていたとは」
「綺代に与えられた影響は大きかったからね」
ハンドルを握る達樹さんのその言葉に、ピクリと反応してそちらに目をやれば、含み笑いする彼が問いかける。
「チョコをあげたとき、お前が俺になんて言ったか覚えてる?」
「あーえっと、そこまでは……」
「『王子様みたい』って言ったんだよ。眼鏡の奥のビー玉みたいな目をキラキラさせてさ」
懐かしそうに語られた事実に、私はなんだか気恥ずかしくなって頬に手を当てた。
「思ってはいたけど、声にまで出してたんだ……」
ボソッと呟くと、達樹さんはおかしそうにクスクスと笑い、「そのときの印象が強いから、ひまりと似てるって思うんだろうな」と言った。
そして、どことなく遠い目で前を見たままこんなことを話し始める。