結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「あの頃の俺は少し荒れてて、あんまり皆近寄ってこなくてさ」

「え、そうだったんですか!?」

「親が教師だから反発してたっていうのもある。それに、嫌いなことは嫌いって言うこの性格だし、単純に意地が悪かったから」


意外な過去に驚くも、その理由を聞けば頷けた。

確かに、素の彼は正直で、強引で、ちょっと口も悪いし。近寄りがたく感じる人もいるかもしれない。


「こんな俺でも気に入ってくれる友達はいたから、そいつら以外に対しては雑な扱いをしてた。でも、さすがに小学生の女の子にそういう態度を取るつもりはなかったし、なにより泣いてたから、お前には優しい男を演じて話しかけたんだ」

「なるほど……。葛城さんとの接待に同席させようとして、私に近づいてきたときと同じですね」


納得していると、達樹さんは「そうだな」と言って、軽く苦笑した。そして少し真面目な表情になり、当時の心情を語ってくれる。


「王子様だなんて初めて言われて、クソ恥ずかしかったけど悪い気はしなかった。それに、人に優しくするのも大事だなって思った。叔父の跡を継ぐためには、今のままじゃ誰もついてこないだろうから、こういう紳士的な接し方もしていかなきゃいけねーなって」

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