結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
達樹さんがオンとオフを使い分けるようになったのはあの頃からで、そんな背景があったのだ。

彼なりに考えてのことだったんだな、と思いながら耳を傾けていると、こんなひとことが飛び込んでくる。


「つまり、綺代が今の俺を作ったってことだ」


その言葉は、水面に雫が落ちたように、トクン、と優しく胸に響いた。

さらりと口にされたけれど、それはきっとすごいこと。私が彼の人生に加担しているということなのだから。


でも、私も初対面のときから達樹さんの影響を受けていたと言えるよね……と考えていて、ふと気づいた。

サンセリールに就職したいと思ったのは、泣き止むほどチョコレートが美味しかったせいだけじゃない。それをくれた王子様みたいな男の子との唯一の繋がりが、サンセリールだったからだ、と。

入社して、その男の子らしき人がいると知ってから、私はずっと彼の存在を特別なものとして胸に秘めていた。

手が届かない、ただの憧れの人だと思っていたそれが、実は恋の種だったのだと、自分でも気づかずに。

つまり、達樹さんと出会い、恋に落ちたことは偶然ではなく、私が望んだ結果だということ。なるべくしてなった運命なのだ。


『こうなることは必然的だったんだから』


夢の中でお父さんが言ったあの言葉の意味は、そういうことだったんじゃないだろうか。

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