結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
温かな声が、私の胸にじんわりと染み渡る。

そういえば、お父さんはこういう人だった。呑気そうに見えて聡明で、仕事が忙しくてなかなか構ってくれなかったけれど、私たち家族のことをとても愛してくれているのは伝わっていた。

でも、もっと甘えたかったな、というのが本音だったりする。お父さんがいなくて、寂しい思いはたくさんしてきたから。

少しセンチメンタルな気分になり、あえて茶化すようにぽつりとこぼす。


「なんかいいこと言ってる……」

「だろ。ま、お前が本当に起きたときには忘れてるだろうけどな」


得意げに白い歯を見せて笑う彼は、腰を上げて私の頭をくしゃりと撫でた。


「ほら、運命の人がお待ちかねだぞ」


意味深なひとことを残し、大きな手が離れていく。お父さんは私に背を向け、部屋から出ていこうとする。


「え……ちょっと待って、お父さん!」


せっかく会えたのにもう行っちゃうの? もっと一緒にいたいのに……。

でもこれ、追いかけたら絶対私も死んじゃうパターンでしょ! さすがにあの世まで行きたくない!

私はベッドから落ちそうになりながら手を伸ばし、もう姿が見えないお父さんをただ呼び続けていた。


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