結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
ヒュッと息を呑み、「すみません!」と言って思わず起き上がろうとした途端、頭にズキンと痛みが走る。片方の肘をベッドにつき、少し身体を起こした状態で頭を抱えた。


「いたた……」

「こら、安静に」


優しくたしなめた彼はベッドに片手をつき、もう片方の手で私の肩に触れ、そっと押し戻すようにベッドに寝かせてくれる。

まるで甘いシーンだと錯覚してしまうくらい距離が縮まって、胸が高鳴った。

さっき抱き留められたときのことまで思い出して、なんだか身体が火照り出してしまう。こういうことに慣れているわけがないのだから。

雲の上の、憧れでしかなかった社長と、こんなに近くで一対一で話せているだけでなく、触れられることなんて奇跡に近い。

まだ夢を見ているような気分だけれど、ベッドのそばから離れようとしない彼を見ると、ふと現実的な問題に気づく。

社長はずっとここにいて大丈夫だろうか。私はもう子供ではないし、付き添っていてもらわなくてももちろん平気だ。


「社長、お仕事は大丈夫なんですか? もう戻ってもらって構わないですよ」

「幸い午前中の予定はずらせたのでご心配なく」

< 30 / 276 >

この作品をシェア

pagetop