結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
なんてことないというふうに答える彼は、「それに」と続け、甘い笑みを浮かべる。


「私がこうしていたいんですよ。つれないことを言わないでください」


ちょっぴりいたずらっぽい口調で放たれた言葉に、ドキリとさせられる。

“こうしていたい”というひとことが、“君のそばにいたい”という意味に捉えてしまうのは、頭を打ったからだろうか。

ほんの少し砕けた雰囲気にもときめいてしまっていると、やってきた中年男性の医師がカーテンを開けた。

簡単な問診や血圧測定などが淡々と行われる。倒れたときに眼鏡が当たり、目の横が少し切れてしまったくらいで、他は今のところ異常はなさそうだ。

ただひとつだけ、なにか忘れていることがあるような気がするのだけど。気のせいかな。


「気絶してそのまま寝ちゃってたみたいだねぇ。まぁ、念のためCT検査しておきましょう」


のほほんとした調子で言われ、私はとっても恥ずかしくなる。

気絶したまま寝てたとか、どれだけ神経太いのよ……。含み笑いする社長が見えてもっといたたまれなくなり、布団に潜り込みたくなった。

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