結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
今日はこのまま検査入院することになった。時刻は午前十一時になるところだ。

家族や会社には社長から連絡しておいてくれたらしく、なにからなにまでしてもらって頭が上がらない。


「本っ当にすみませんでした」


検査の準備のため医師が去っていった直後、ベッドの脇で簡易椅子に座る彼に、私は心から謝罪した。

しかし、なぜか社長のほうが申し訳なさそうにしている。


「いや、謝らなければいけないのは私のほうです。あのとき、私が手を離してしまったから」

「そんな、決して社長のせいじゃありません!」


私が挙動不審になってしまったせいですから! というかむしろ、あそこに油をこぼしたおっちょこちょいな後輩が元凶だと思う。

慌てて否定していたさなか、突然こちらにすっと手が伸ばされる。社長の骨張った手が私の顔の横に近づいてきて、目を見張った。

いつの間にか下ろされて頬にかかっていた髪をそっと除けられ、目の横に張られたガーゼが露わになった。


「ここも……」


ぽつりと呟く彼の手は、肌に触れるか触れないかくらいの位置で停止していて、すごく熱く感じる。

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