結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
魔法をかけられたように動けなくなる私を、彼は憂いを帯びた色気のある瞳で見つめ続ける。


「綺麗な顔に傷をつけることになってしまって、本当に申し訳ない」


彼はとても真剣に謝ってくれているというのに、私の頭の中にはふわぁっと花が舞う。

だって、綺麗って……! 昨日のお見合いのとき同様お世辞だろうけど、ご自身こそ美しい社長に言われると嬉しさがハンパじゃない。ごめんね甘利さん。

女はイケメンに弱い生き物だとつくづく感じながら、「たいした顔じゃないので全然平気です!」と言って、顔に締まりがなくなるのを笑ってごまかした。

なんとか興奮を抑えて平静に戻ると、周りが見えづらいことにようやく違和感を覚える。


「そういえば眼鏡は……」


寝ている今、見えるはずもないけれど目をキョロキョロ動かして眼鏡を探すと、棚に置いてあったらしいそれを社長が取ってくれた。

しかし、受け取ってすぐ、眼鏡を支えるテンプルが曲がってしまっていてかけられないことが見て取れた。


「うわ、曲がっちゃってる」

「あぁ、倒れたときのせいか。近いうちに弁償させてください」


さらりと恐縮すぎるひとことを放たれ、私はぶんぶんと首を横に振る。

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