結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
社長に弁償させるだなんて、たとえ百円のペン一本だってためらわれるもの!


「そんなっ、いいですいいです! この眼鏡も安物ですし」

「いっそのことコンタクトにしますか?」

「いやいやいや」


なんか話が噛み合ってないぞ、とあたふたする私を見て、社長はおかしそうにクスクスと笑う。

そして、なぜか再び私を見つめてくるものだから、目が離せなくなってしまった。

どうしたんだろうかと若干戸惑う私に、彼はどこか色っぽい表情を浮かべ、独り言のように呟く。


「……まぁ、たまに眼鏡を外している姿を見るのもいいよな。無防備な感じがたまらない」

「え?」


それって、どういう……? なんか、穏やかで紳士的な社長と少し違って、セクシーで危険な色香を漂わせているように見えるのも気のせいかしら。

いまいち言葉の意味を汲み取れず、ぽかんとして首をかしげる。けれど、社長は私の理解は特に求めていないようで、意味深に口角を上げるだけ。

そして、スーツの内ポケットからペンとメモを取り出し、さらさらとなにかを書き始める。それを一枚破ると、私に差し出してきた。

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