結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
優しい笑みを残して去っていく彼を、私はキョトンとして見送る。

大切な話ってなんだろう。そういえば、頭を打つ前になにかを話していたような……。

さっきから感じていたもやを晴らすべく、社長が研究室にやってきたところから記憶をリプレイしてみる。そうして、あの衝撃な言葉たちが蘇ってきた。


“付き合ってくれませんか”

“私には君が必要なんだ”


……そうだった! よくわからないけれど、告白まがいの言葉を頂戴したんだった!

誰もいなくなったのをいいことに、布団を頭まで被って悶える。

ほとんど話もしたことがない相手から告白されることなんて、統計を取ったってきっと十パーセント未満に違いない。

そうわかってはいるものの、私にもある乙女心がほんのわずかな可能性にすがろうとしている。

あぁ、本来なら今頃あの意味を理解できていたはずが、先延ばしになってしまった。焦らされるのは長時間かかる実験だけで十分なのに。

むくりと布団から顔を出し、手に持ったままの紙切れを眺める。

こうなったら、社長が書いた携帯番号の数字の間に+や-を入れて、十になるように計算して気を紛らすしかない!


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