結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
学生時代によくやっていた理系ならではの遊びをし始めてそれほど経たないうちに、検査をするため呼ばれた。
しかし、それを終えてベッドに戻るとまた悶々としてしまい、同じ計算遊びをするけれど、どうしても泉堂社長の姿に邪魔されてしまう。
「あーダメだぁ~」
やっぱり気になって仕方なく、私はベッドの上でひとり悶絶する。そのとき、シャッという軽い音がしてカーテンが開かれた。
現れたのは、仕事中とは違ってすっぴんに近い薄化粧のお母さんと、勤めている皮膚科クリニックで早めの休憩を取って来てくれたらしい姉の紫乃(しの)だ。
頭を抱える私を見たふたりは、ギョッとした様子で私のすぐそばに駆け寄ってくる。
「綺代!?」
「どうしたの、頭痛いの!?」
「あ、や、違う違う! なんでもないよ、ちょっと考え事してただけだから」
慌てて手の平を向けて誤解を解くと、ふたりは大きく息を吐き出した。
「もう、驚かさないでよ」
「ただでさえ社長さんから連絡来てびっくりしたっていうのに、お母さんの寿命縮めないでくれる?」
安堵と呆れが混ざったような顔をするふたりに、私は「ごめんなさい」と素直に謝った。