結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「甘利さんもすごくいい人だったけど、私とは合わないと思う」


それは性格的にというだけじゃなく、なんとなくしっくりこない感じがする。ドキドキワクワクするような、心の動きも感じなかった。

恋人になるために必要な、とても大事ななにかが足りない気がするのだ。まぁ、数時間話しただけではわからないか。

でも、社長と一緒にいたのはたったの数十分なのに、私はこれまでにないほどドキドキしたんだよなぁ……。

ぼんやりと思いを巡らせていると、私を元気づけるように、お母さんが明るい調子で提案してくる。


「もう相談所は退会したら? 綺代のことをよくわかってる私が、合いそうな人を探しておいてあげるわよ。イケメンなお客さんも案外店に来るんだから!」

「んー……」


確かに、お母さんが働くスナックにはいろんな人が来るから、その中にいい人がひとりくらい紛れているかも……と考えながら、曖昧に返事をした。

なんだか煮え切らないのは、きっと社長のことがあるからだろうな。

彼の“大切な話”というのが、もしかしたら私の人生を百八十度変える可能性もないとは言い切れないから。

その可能性は限りなくゼロに近いというのに、僅少な望みを持ってしまう自分はとても滑稽で、人知れず呆れたため息を漏らした。




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