結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
目をまん丸にして立ち止まる私に気づいた彼が、資料を閉じてこちらに向かってくる。その麗しい微笑みは、朝日よりもキラキラと輝いていて眩しい。
「おはよう」
「おはようございます!」
元気に挨拶をする咲子ちゃんに続いて、私も平静を装った挨拶をする。
この感じ……まさか社長は私を待っていた?
信じられない思いで、向き合う彼を見上げたまま立ち尽くしていると、にんまりした咲子ちゃんが「先に行ってますね」と私に声をかけ、中に入っていこうとする。
そのとき、ちょうど氷室くんも出勤してきた。社長に挨拶をし、興味深げに私たちを見つめる彼は、なにを勘違いしたのかボソッと呟く。
「ついに倉橋さんにも遅い春が……」
「氷室くん! トリグリセリドの結晶構造について語り合おっかー!」
咲子ちゃんが慌てて氷室くんの腕を掴み、事務所の中へズルズルと引き込んでいった。
空気を読める咲子ちゃんは、私たちに気を遣ってくれたんだろう。
一方の氷室くん、“遅い”が余計だよ。というか、別に春が来たわけじゃないから。
他の皆も私たちのことをいろいろと詮索しているのかな、と思うといたたまれなくなるけれど、意識は口を開く社長へとすぐに向けられる。
「おはよう」
「おはようございます!」
元気に挨拶をする咲子ちゃんに続いて、私も平静を装った挨拶をする。
この感じ……まさか社長は私を待っていた?
信じられない思いで、向き合う彼を見上げたまま立ち尽くしていると、にんまりした咲子ちゃんが「先に行ってますね」と私に声をかけ、中に入っていこうとする。
そのとき、ちょうど氷室くんも出勤してきた。社長に挨拶をし、興味深げに私たちを見つめる彼は、なにを勘違いしたのかボソッと呟く。
「ついに倉橋さんにも遅い春が……」
「氷室くん! トリグリセリドの結晶構造について語り合おっかー!」
咲子ちゃんが慌てて氷室くんの腕を掴み、事務所の中へズルズルと引き込んでいった。
空気を読める咲子ちゃんは、私たちに気を遣ってくれたんだろう。
一方の氷室くん、“遅い”が余計だよ。というか、別に春が来たわけじゃないから。
他の皆も私たちのことをいろいろと詮索しているのかな、と思うといたたまれなくなるけれど、意識は口を開く社長へとすぐに向けられる。