結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「昨日は電話をくれてありがとう。ちょうど会食があって、出られなくてすみませんでした」

「いえ、そんな、全然いいんです!」


それでわざわざ来てくれたのかな。だとしたら恐縮すぎる……!

ぷるぷると首を横に振る私を、彼は優しい眼差しと声で包み込んでくれる。


「かけ直そうかと思ったんですが、夜遅くなってしまったし、やっぱり顔を見て話したかったので。無事に復帰できてなによりです」

「……はい、おかげさまで」


口元も頬も、だらしなく緩んでしまってどうしようもない。

『顔を見て話したかった』だなんて、さりげなく女子が嬉しくなる言葉をかけてくれるのはさすがだ。

気恥ずかしくて俯きがちになっていると、頬骨の辺りにぬくもりを感じた。病院でされたのと同じように、横に流した前髪を少し掻き上げるようにして、大きな手が触れている。

ドキッとして目線を上げれば、思いのほか近くにこちらを見つめる瞳があって、肩が跳ねる。


「傷、薄くなってきましたね。よかった」


どうやら目の横の傷を確認したらしく、目の前の端正な顔に安堵の笑みが広がった。

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