結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
ちょ、ちょっと社長! 社内でこんな仕草をしているところを見られたら、勘違いした女子が敵になってしまうかもしれない。病院送りにされたくないんですが!

大胆な彼のおかげで顔に熱が集まるのを感じつつ、手が離された直後にキョロキョロと周りを見やる。

幸い女子どころか研究課のメンバーもほぼ出勤したようで、廊下には私たち以外いなくなっていた。

ほっと胸を撫で下ろすと、社長は離した手をポケットに入れて話を方向転換する。


「急ですが、今週の土曜日はなにか予定はありますか?」


突然の問いかけにぽかんとしてしまう。

私の休日はもっぱら本を読んでいるか、レンタルした映画を見ている。咲子ちゃんや、ごくたまに氷室くんと、ランチやスイーツを研究して語り合うこともある。

今週はぐーたらして過ごす予定だけど、なぜそんなことを聞くのだろう。


「土曜日、ですか。特になにもありませんけど……」

「開けておいてもらえますか? 半日でいいので、君の時間を私にください」


真剣な表情で頼まれ、心臓が大きく揺れ動く。

そ、それってまさか……社長と、デート!?


「えぇっ!?」


数秒遅れて、頭から抜けるような叫び声を廊下に響き渡らせてしまった。

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