結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
始業時間五分前になんとか事務所に入り、課長に挨拶をして、迷惑をかけたお詫びにちょっとした菓子折りを皆に渡してから業務を始めた。
しかし、案の定身が入らない。気づくと上の空になってしまって、データの解析もいつもより時間がかかってしまう。
お昼休憩に入ると、私をとても気にかけていた咲子ちゃんと、普段通り無表情で淡々と作業をこなしていた氷室くんと、三人でランチをしに会社付近の定食屋に向かった。
普段はお弁当を持参していて、毎週水曜日だけは気分転換に外で食べよう、と咲子ちゃんと決めている。氷室くんは誘われたら来る、という感じだ。
サラリーマンでいっぱいのこじんまりとした店内、そのテーブル席につくなり、私の隣に座った咲子ちゃんは眉根を寄せてさっそく切り出す。
「綺代さん、やっぱり今日様子がおかしいですよ。なに言われたんですか? 社長に」
興味津々で私に迫ってくる彼女に、話を聞いてもらいたい気持ちはものすごく大きい。けど、『内密に』と釘を刺されちゃったからなぁ……。
少し悩んだあと、当たり障りのないことだけ教える。