結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「カッコいいです!」


質問の答えになっていないけれど、興奮のあまり正直に口にしてしまった。だって、本当にすごく似合っているから。

社長はお世辞だと捉えているのか、軽く笑って「ありがと」と言う。すぐに外されてしまったけれど、貴重な瞬間を見ることができて大満足だ。すごくデートっぽいし!

……って、まだ満足してはいけない。肝心な自分の眼鏡を選んでいないのだから。

騒ぐ胸を抑えて再びディスプレイを眺め始めると、ふいにとても可愛いデザインの眼鏡が目に留まり、思わず手が伸びた。

柔らかな桃色のフレームで、丁番が花の形になっており、そこから伸びるテンプルも葉っぱを象っている。私が愛用していた、一本五千円のなんの特徴もない眼鏡とは大違いだ。

すごく惹かれて見入っていると、愛想のいい店長らしきおじさんがやってきて声をかけてくれる。


「お客様は肌の色が明るく色白ですから、その柔らかい色はとてもお似合いになると思いますよ」

「そうなんですか」


そんな知識は初めて得たので、感心したように頷いた。

肌の色で自分に合う眼鏡の色が決まるのか。なにも考えずに、なんとなくオシャレかなーというだけで、今まで紅色のフレームを使ってたわ。

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