結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
他にも、フェイスラインによって似合う形状が違うということを教えてくれて、私が手にした眼鏡は偶然にも一番合いそうだということがわかった。

でもなぁ、お値段が……。

どうしても気になるのはそこだ。だって、私だったら即諦める金額なんだもの、さすがに遠慮せずにはいられない。

やっぱりご縁はないわ……と思いつつ、すごすごと眼鏡をディスプレイに戻そうとした、そのときだった。


「こっち向いて」


そんな声が耳に入ってきたと同時に、眼鏡を戻すのを制すように、私の手に大きくて温かい手が重ねられる。

驚いて隣を仰ぎ見ると、社長の瞳と視線がぶつかった。

ドキ、と胸を鳴らして固まる私の顔を両側から包み込むように、長い指が伸ばされる。

思わず肩をすくめて身構える私から、今かけている眼鏡がスッと取られた。そして、今度は桃色のフレームの眼鏡をかけてくれる。

こ、こんなことをしてくれるなんて。なんか恥ずかしい……。

こちらをじっと見つめる瞳の力に耐えられず、伏し目がちにしていると、眼鏡をかけ終わった彼の手が離れていく。

おずおずと見上げれば、彼の顔に柔らかな笑みが広がった。

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