結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
あぁ……確かに、正直に言われていたら、それはそれで怖じけづいて断っていたかもしれないな。ここまで来てしまったら、もう引くことはできないもんね。

というか、今さら乗りかかった船から降りる気はない。

私の代わりはいないのかと思うと、今日の件はとても光栄なことにも思えてくる。社長の力になりたいという気持ちも、かなり大きい。だから。


「……こんな私でもお役に立てるのなら、ぜひ同行させてください」


顔を上げ、背筋を伸ばしてそう言ったとき、ちょうど赤信号に差しかかり、社長がこちらを向いた。

目を見張る彼を一瞥し、私は小さく微笑む。


「社長が私を必要だと言ってくれたこと、すごく嬉しかったし、期待に応えたいと思いました。この眼鏡に見合うくらいの……いや、それ以上の働きをしてみせます」


気を取り直して宣言すれば、じわじわとやる気が湧いてくる。

葛城さんがビジネスパートナーになってくれるように、全力で元素話に花を咲かせようじゃありませんか!

ぐっと手を握ってひとり意気込んでいると、ふと運転席から向けられる視線に気づき、振り向いた。

気怠げに片手をハンドルにかけてこちらを見つめる、どこか熱っぽく感じる瞳に捕らえられたように動けなくなった、その瞬間。

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