結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
えぇぇ、ちょっと、なんで抱きしめられてるの!? ここお店の前だし、道行く人が見てますけど!

あまりの衝撃でただ口をぱくぱくさせるだけの私に、甘くとろけるチョコレートのような声が耳から流れ込んでくる。


「やっぱり最高だよ、お前。猫だったら全身撫で回してやってる」

「なっ!? な、舐め回す!?」


もはやパニックで裏返りまくった声で叫ぶと、彼は私を抱きしめたままぶっと吹き出した。


「あほ。“撫で回す”って言ったんだ。まぁ、舐め回してやってもいいんだが」


いたずらっぽく囁かれ、ぶわっと顔に熱が集まる。

猫と化した私に彼がいやらしく舌を這わす、いかがわしい妄想が浮かんでしまい、卒倒しそうになった。

抵抗する力も、言葉すら出せずに悶える私。しかし、頭の隅っこで冷静に分析する自分もかろうじて残っていた。


彼のこの行動はおそらく、葛城さんを落とせたことによる感情の高ぶりの表れ。ただそれだけのことなのだろう。どこまでも包み隠さない人だ。

振り回されるこっちの身にもなってもらいたいものだけど……でも。

私を抱きしめる腕は力強くて、劇薬みたいにドキドキさせられて、不思議と心地良くて。

いつまでもこうしていてほしいと、一瞬でも願ってしまった自分が恥ずかしくて仕方なかった。




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