彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「で?」
って言われても、状況はいま話したとおりなんだけど。
「それで桃ちゃんは、好きになっちゃったんだ?」
望亜奈さんは目の前のサラダをつつきながら、当たり前のことのように言うから、
「え?いや、あの、好きとかそんなんじゃなくて、デスね……」
段々と声が小さくなる。
「この前私に主任のアドレス聞いてきた時って、ここでご飯食べた日でしょう?」
「はい」
「出来るだけ関わらないようにしてた桃ちゃんが、あの主任のアドレスを聞いてくるなんて。なんかあったんだなぁって思ってたんだよね」
う。まさか望亜奈さんにそんな風に思われてたなんて。
しかも望亜奈さん、楽しそうにニヤニヤしてるし。
これ以上は突っ込まれても答えようがないっていうか。
「でも、その、まだ好きとかそんな―――」
「でも。気になるんでしょう?」
う。
なんていうか、これ尋問でしょうか。
「……はい」
「ん。素直でよろしい」
「あの、でも、」
「気になった瞬間が恋の始まりってね。いうもんよ」
誰が言うんでしょうか。そんなこと。
っていうか、この気持ちって恋なの、かな?
「いや、たぶん今まで真面目な主任しか見てなかったのが、違う一面に興味を抱いたって言うか……」
「だからそれが気になるってことでしょう?いい加減認めなさいよ」
認めたら何かいいことあるんでしょうか。
だってこれ以上認めたら、
「桃ちゃん。気持ちに蓋をしても、きっとあふれてきちゃうから」
あふれた時に考えます。
今はなるべく気のせいって思いたいから。
「そんなことには、ならないからだいじょ―――」
「桃華ちゃん、今日のデザートは何がいいかな?」
って、朔也さん?いつの間に?
音も立てずに背後から忍び寄るとかひどいです。
まさかっ、聞かれてないよね?今の話。